第9回ダナン都市開発フォーラム(9月9日、横浜市主催)にて、ダナンへの投資展開と地域間交流‐「地域企業における日本型技術者・職人育成」についてご提案しました

第9回ダナン都市開発フォーラムin横浜(令和元年9月9日開催)
ダナンへの投資・展開と地域間交流-地域企業における日本型技術者・職人育成)
              プレゼンター 専務理事・事務局長 藤岡文七

1.投資・進出先としてのダナンの魅力
ダナン市は、100万人以上の人口を擁し、良好な生活環境と立地を誇る、優秀な若い人材が豊富な文化都市です。
同市は、ベトナム国全体がこのところ持続的に高い成長を達成しているなかにおいて、さらに高い発展を遂げております。しかし、今後共その成長を持続的なものとするためには、いくつかの課題を克服しなければならない状況と考えます。

2.ダナンの持続的成長への当面の課題
ダナン市の持続的成長に向けての基本的課題として、横浜市とJICAも協力されている「都市環境インフラ・交通インフラ整備」があります。持続的に高い成長を遂げていることもあってその整備には多額の資金が必要であり、また発展に不可欠な各分野の専門家、技術者や職人の不足の問題も深刻です
また、当面のいくつかの課題の解決に向けての政策(Policies)や対応(Solutions)の企画や実施を調整、統合する困難さもあります。一般的に「選択と集中(Selection and concentration)」とか「構造改革(Structural reform) 」の必要性と表現しています。
次に、ダナン市に特徴的にみられる若い優秀な人材が豊富なベトナムですが、即戦力である専門的・技術人材が決定的に不足していることが投資実施の大きなネックになっています。専門的・技術的人材の需要は非常に強く、その賃金は、通常の労働者の5~10倍になっており、企業間の技術者や専門家の引抜き競争にも熾烈なものがあります。
ダナン市は観光が一大産業です。その認知度を高めるため、同じく歴史・文化都市として有名なフエやホイアン等との周辺地域連携を推進し、関連投資(インフラ、広報等)も行う必要もあると考えます。
ダナン市への投資促進を考える際にはいくつかの視点があります。ここでは、日越両国連携での持続的発展に向けて豊富で優秀なベトナム青年の育成と活用を行うべきことにつき、JVEFからご提案を申し上げます。
ベトナム産業・社会は、現在、ICTという発展に欠かせない先端的分野が育ちつつある一方、都市環境や産業の持続的発展のための様々なインフラ整備や裾野産業の展開が大きく遅れているという2つの側面を有しています。若者はICT文化に吸い寄せられています。
日本の産業・社会の発展は、過去の技術と伝統を受け継ぎつつ若者の新進気鋭の力を新たな産業分野で活用し産業構造の大きな変化を乗り越え、産業・社会の構造改革を推し進めて持続的に発展してきました。社会の高齢化の進展もあって改革推進力に衰えを見せており、かつ、産業・社会が、ICTの本格活用という時代を迎え、多くの先端産業分野を抱えているわが国で、その若者の数が絶対的に減ってきていることが、日本産業社会の持続的発展への大きな障害となっております。実際、様々な熟練あるいは伝統的な技術(者)を次の世代に柔軟に受け継げないことから、日本では、中小企業の数そのものが急減しています。
今般のご提案は、「やる気に満ちたベトナム青年を育成しながら、日越両国の持続的発展を視野に入れ、win・win発展につなげるべきだ」というものです。

3.地域win・win人材育成・活用計画(仮称)
「地域win・win人材育成・活用計画(仮称)」は、「(日本の)技能実習(Technical Intern Training)制度と、本年4月に発足した新たな特定技能(Specified Skill)制度を本格的に活用し、実務(就労)を通じて、日越の各産業・職域で活躍する若手技術者・職人を育成していくこと」を目的としています。優秀で意欲あるベトナム青年を、日本型(もとより、従前のままではなく、新たな時代環境に即した考え方・方法で)技術者・職人に「時間を惜しまず」実務を通じて育成することです。これは、日越両国のwin・win連携での経済・産業・社会の持続的発展に大きく資すると考えます。
 ご提案理由は以下の通りです。
 1)若者の数と技術力の補完関係:日本はこれからの多様な産業・社会の技術と文化を担うべき「若者」が不足しており、一方、ベトナムはやる気のあるICT感覚を有した若者は豊富だが、多様な産業・社会の発展に向けての技術者や職人の育成力と技術そのものが不足していること
 2)日本型環境の育成力(中小企業、地域産業が持つ人材育成力とそれを受入れることができる文化)とその受容力:すそ野産業・中小企業の技術とその人材育成力がある国は多くはなく、また、(欧米型ではなく)日本型の文化を受け入れる力がある国としてベトナム国が有力候補であること
 3)実践的育成:「(早い社会の展開に遅れがちな)大学」とは違い、実務の中で自ら生き抜く力(責任感)、創意工夫力や社会性を身につけること
 4)人材育成には「社会・環境」と「時間」が必要:短期間の詰め込み型知識偏重育成では不十分であること
 計画実施に向けての主な要件ですが、以下の通りです。
 1)本邦企業の決断:「若手」による事業活性化・新時代への対応、ベトナムをはじめとする海外展開及び事業承継につき積極的にお考えいただくこと
 2)地域・自治体の支援:地域企業(中小・裾野産業)の若手外国人材の雇用と育成には地域社会と自治体の受入れ支援が不可欠(受入れ人数や地域の受容力(地域力)によってコストや効果は大きく変わってくること)
 3)(JVEF・エスハイ連携で対応)職業意識を理解したやる気ある若手人材の雇用と適切な事前教育:量より「質」がはるかに大切
 4)(同上)適正な職種設定と育成プログラムの実施:育成は「時間的投資」
 5)(同上)意欲ある若者の技能実習(就労)中と出口戦略への支援:わが国の若者にも良い刺激に

4.計画実施において期待する成果(日越両国の実利を求めて)
(1)日本・企業にとっては、①深刻な技術者・職人人材及び後継者不足への対応、②ベトナム展開要員(日越連携での発展)の育成、及び、③企業・地域の活性化(実績が示しています)に繋がります。
(2)ベトナム国・企業にとっては、①喫緊の課題である技術者・職人の適切な育成、②日本企業・裾野産業の投資・誘致促進、及び、③日本型育成への理解と熟練技術者養成(欧米型とは異なり、実務の中での育成、しかし、日本型も各業態で、育成に向けての技能ステップ・アップに向けての考え方の整理などが必要)に繋がります。
(3)ベトナム国の各種のインフラ整備において、①自国の技術者・職人による整備(資金も自らの資金が多いのが理想(自国資本の蓄積))、及び、②日越企業連携推進(資金の効果的使用、企業内転勤等による技術者育成)に繋がります。
この計画の実施には、多額の社会・公的資金は不要です。               以上

(資料)ダナンへの投資展開と地域間交流‐「地域企業における日本型技術者・職人育成」